震災後、暴動や掠奪も起こらず、お互いを労り合う日本人の姿が世界から称賛された一方で、日本各地で混乱に乗じる「残念な人々」も少なからずいる。
被災地で散見された「便乗値上げ」は、被災地から遠く離れた西の都でも起きていた。
東北地方の旅館やホテルが、「無料」や「1泊1000~3000円」程度の格安価格で被災者を受け入れる一方で、大阪・京都では、ビジネスホテルや1週間単位で利用できる短期賃貸マンションなどの利用料が急騰した。
福島第一原発で建屋が次々に爆発した後の3月中旬、東海道新幹線は東京から避難する外国人ビジネスマンや親子連れでごった返していたという。京都駅にほど近いビジネスホテルに1歳の子供を含め家族4人で泊まっていた都内在住の30代女性が証言する。
「4人で一緒に滞在したいということで、大きめの部屋をネットで予約していきました。ネット割引で、ルームチャージは1泊1万5000円。ところが、滞在3日目に、フロントからこんな電話がかかってきました。
『予約が増えたので、来週は正規料金の1泊9万円になります。延泊されますか?』」
戸惑って「考えます」といったん電話を切ると、その日のうちに何回も延泊するか決断を迫る電話があったという。
大阪でも、普段は1泊6000~8000円を提示しているビジネスホテルが、避難組の問い合わせに対し「1泊1万円以上」としたケースが複数あった。
外資系のビジネスマンが殺到したのが、関西の短期賃貸マンションである。各地で短期賃貸マンション事業を展開するA社では、通常はワンルームなら1週間3万円あまりで利用できるところ、震災後、4万5000円出さなければ利用できなくなった。
A社の担当者が語る。
「普段は利用料を割引しているのです。震災後は避難者の利用が急激に増えて、割引料金で案内できる物件がなくなっただけ」
この「値上げラッシュ」、4月に入ると、外国人観光客の落ち込みなどで需要が急速に冷え込み、再び「割引合戦」になっている。
※SAPIO2011年5月4日・11日号