ツイッター上で「ネット規制強化法案」に関する「デマ騒動」が4月11日に発生。一体それは何だったのか? ジャーナリストの上杉隆氏が語る。
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〈火事場泥棒。言論の自由への挑戦。情報暗黒内閣の正体露に〉――4月11日、私がツイッターで、ネットに掲載された『週刊ポスト』(4月22日号)の「菅政権、震災のドサクサの中で『ネット規制強化法案』を閣議決定」との記事を引用しながらつぶやいたところ、大きな反響があった。ソフトバンクの孫正義氏は〈本件に抗議して、今から3日間tweetやめます。ハンガーストライキみたいなもんです〉としてツイッターを停止した。
ところが私のつぶやきに対し、「デマ」だとの批判が巻き起こった。批判者は「閣議決定は震災当日の午前中だからドサクサではなく、しかも法案はウイルス作成罪に関するもので、ネットを規制するわけではない」というのだ。ITジャーナリストの佐々木俊尚氏までが拡散に協力し、デマ批判が広まった。
確かに、閣議決定のタイミングは『週刊ポスト』も翌号で訂正していたように当日の午前中であった。しかし、私は日付など問題視していなかったし、気にもしていなかった。問題はこの法案の中身である。
私はこの法案を何年も前から取材してきた。批判者は、「ネットを規制するわけではない」というが完全に間違っている。この法案は、ウイルス作成罪以外に、捜査当局がプロバイダなどに対し裁判所の令状なしにネット上の通信履歴の保管を要請できる条文を織り込むなど、「言論統制」につながる可能性があるとして、ここ数年、危険視されてきたものだ。国会議員の中にも、法務委員の辻恵議員(民主党)が反対しているように、「言論統制」の第一歩とみる向きが強い。しかも、閣議決定された法案を震災後の4月1日に国会提出したのだから、立派なドサクサ紛れの「火事場泥棒」である。
そもそも誤報とデマは違う。確かにポストの記事には時期の間違いがあったが、意図的にウソを流すデマとは違う。当然、私のリツイート(転載)にデマを流す意図はなく、単に危険な事態が進行していることを示したのみである。
私が菅内閣に対してずっと使ってきた文言――「情報暗黒内閣」による「火事場泥棒」はこの法案だけを指したものではない。
4月6日、総務省は、プロバイダ等の業界団体を通じて、「インターネット上の地震等に関連する情報であって法令や公序良俗に反すると判断するものを自主的に削除することを含め」た必要な措置を講じるよう、通達を出した。政府の「被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム」が同日、被災地での犯罪防止や治安維持について対策をまとめたのを受けて出された、「ネットデマ削除要請」である。
孫正義氏はストライキからの復帰後、この通達と前出の法案について〈両方は、深い所で関連。両方とも問題が内在。この両方などで言論統制の恐れに対しストライキしました〉とツイッターで言明した。
※週刊ポスト2011年5月6日・13日号