菅直人首相は4月11日に「復興構想会議」を設立した。被災地復興のグランドデザインを決める、いわば日本の未来像を描く大仕事を担う重大な会議だ。
ところが、そこにはなぜか政治家もいなければ大臣もいない。民間人の学者や、失礼ながら「国家建設」には縁の薄そうな文化人が並ぶ。これで「政治主導」や「政府の責任ある姿勢」が担保されるとは到底思えない。
その会議の初会合(14日)で、さっそく菅政権の企みが透けて見えた。議長に就任した五百旗頭真(いおきべ・まこと)・防衛大学校長はこう宣言した。
「復興のために要する経費は神戸の比ではない。国民全体で負担することを視界に入れないといけない」
都市再生ではなく、のっけから増税の話であった。菅政権の悲願である大増税を、“民間中心の会議”の名を借りて推進しようという魂胆が丸見えである。
案の定、振り付け役は財務省だった。元財務省理財局長の佐々木豊成・内閣官房副長官補が同会議の事務局である「被災地復興法案等準備室」の室長に潜り込んでおり、会議を裏から操る重要ポストを握った。
内閣府に出向中の財務省中堅はそれを隠そうともしない。
「五百旗頭議長は政治・外交史が専門だが、政府の審議会委員をいくつも務めてきたから財務省とパイプが太い。いきなり復興増税を打ち上げたのは、佐々木さんが、“財源論を後回しにしたら思い切った復興ができなくなります”とアドバイスしたからです。
財務省は与謝野馨・経財相が主導していた税と社会保障の一体改革を検討する集中検討会議を一時休止させ、復興構想会議で先に増税案をまとめるつもりです。五百旗頭復興増税で3%上げ、与謝野さんの社会保障一体改革で2%上げる。合わせて来年秋に消費税率10%を目指す」
菅内閣が第一次補正予算に「年金財源を復興に回す」方針を盛り込んだことも、「年金まで使わなければならないほど国の台所は厳しい」と見せかける増税の布石だという。
※週刊ポスト2011年5月6日・13日号