国民に背を向けて既得権益者に尻尾を振る菅直人政権が堂々と権力の座に居座っていられるのは、その「一味」に政権を監視するはずの大メディアが加わっているからである。
財務省から増税のミッションを託された菅首相設立の「復興構想会議」の委員には、新聞界から2人が参加している。
渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長の腹心と呼ばれる橋本五郎・読売新聞特別編集委員と、元朝日新聞論説委員の高成田享・仙台大学教授である。
大マスコミが権力の一部となって政策立案に関われば、もはや政権に対するチェック機能は働かない。菅首相が復興政策づくりにメディアの助けを借りた効果はてきめんだった。
朝日新聞は4月18日付朝刊で〈復興増税「賛成」59%〉という見出しで世論調査の結果を掲載した。読売新聞が報じた世論調査(4月4日付)の増税賛成は「60%」。毎日新聞(4月18日付)は「58%」と、大メディアは横並びで「増税キャンペーン」を展開している。
しかし彼らの“調査”では、「増税以外の財源論」は選択肢にない。「復興のために増税を我慢しますか、絶対に反対ですか」と聞けば、多くの国民が「賛成」といわざるを得ないのは当然ではないか。
見逃してはならないのは、この利権にまみれた「政・官・報トライアングル」の利害が、国民の利害と決定的に相反することである。
「脱原発」ではなく「原発維持」、「増税なき復興」ではなく「大増税」、「国民の安全」より「政権の安定」、これで得するのは利権を手にする政治家と官僚、そして彼らの腰巾着でいたい大メディアだけである。
※週刊ポスト2011年5月6日・13日号