警察庁は、4月1日付で、“東日本大震災にかかわる”という件でネット上に書き込まれた内容のうち7件に削除依頼を行っていた。「デマの削除依頼」がどんな意味を持つかについてジャーナリストの上杉隆氏が解説する。
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もちろん、ネットのデマにより、誤った情報が広まることは問題ではある。しかし、私の(ツイッターの)つぶやきのように、ネット上の誤りはツイッターなどによって、すぐに訂正されやすい。むしろ怖いのは、そうした傾向を無視して言論を封殺しようとする政府の方だ。
そもそも、デマを取り締まる側の政府は、果たして本当の情報を出してきたといえるのか。私は福島第一原発の事故発生当初から、「炉心溶融=メルトダウン」の可能性を再三、政府や東電に問いただしてきた。だが、枝野幸男・官房長官はいまだにメルトダウンを認めず、それどころか原子力安全・保安院は、炉心が損傷し燃料棒が溶融する事態を認めながら、溶けた燃料棒が原子炉下部に落ちるのが「メルトダウン」だから、「メルトダウンは起きていない」と詭弁を弄している。
このため、「メルトダウン」を唱え続けてきた私はいまだに「デマ」扱いを受けているが、それは政府の判断によって私のツイッターが削除されることの可能性を意味する。
削除要請を出すデマの線引きを曖昧にしたまま進行しているこの事態は、政府の情報統制目的以外の何物でもない。
もうひとつ、提出法案も総務省通達も、インターネットだけを狙い撃ちしていることに注目したい。
フェイスブック、ツイッターなどによる「ソーシャルメディア革命」が起こったエジプトでは、政府が反政府デモの混乱を鎮圧するため、ツイッターの接続ブロック、インターネット接続の遮断などの措置を取った。チュニジアやリビアでも同様である。
菅直人はその意味で、ムバラク、ベンアリ、カダフィとならんで、「言論統制」に手を染めた独裁者の仲間入りを果たした。これが「情報暗黒内閣の正体」である。
※週刊ポスト2011年5月6日・13日号