55才で亡くなった田中好子さんも発症した乳がん。厚生労働省は、2009年から乳がん検診用の無料クーポン配布をスタートさせた。対象者は40、45、50、55、60才の年齢になった女性。これは自宅に送付されるが、昨年の厚生労働省の報告によると、クーポン利用者は24.1%にすぎなかった。
神奈川県在住の専業主婦のA子さん(43才)は30才のときに長男を出産。これまで一度も乳がん検診をしたことがないという。
「“受けなきゃ”と思ってるうちにタイミングを逃しちゃう。結局のところ、自分は乳がんにならないとどこかで思ってるんですよね。家族で乳がんになった人もいないし、出産もして、生理も順調。毎日とはいわないけど、自分なりに触診して、シコリやひきつりがないですし…」
10才の双子の母親である宮崎県在住のB美さん(45才)は、「子育てに追われる日々のなか、病院は遠いし、正直面倒で…」という理由で乳がん検診をしていない。
乳がん治療にかけては都内でも有数の『新宿ブレストセンター クサマクリニック』日馬幹弘院長が説明する。
「日本乳癌学会が認定している乳がん専門医は全国で800人しかおらず、しかもその多くは、東京を中心とする関東圏、大阪、札幌、仙台といった大都市圏にある大病院に集中しています。マンモグラフィーの検査をするのに、片道3時間以上かけて病院に行かなければならない地域もあるのが実情です。また、これだけ働く女性が増加しているにもかかわらず、平日の通常時間しか検査ができない施設が多いのです」
乳がん検診の主な流れは、問診、触診・超音波・マンモグラフィー検査。マンモグラフィー検査は2000年から日本で導入された、乳房を平らにして行うX線撮影。乳房を板で挟み、上下、左右の2方向から撮影して、所要時間は5~10分。できるだけ平らにするので少し痛みがある。そのため、
「どこも悪いところなんてないのに、痛い思いをしなきゃいけないなんて、いやですよ…」(前出・B美さん)
そんな気持ちで検診を受けない女性も多い。しかし、触診だけではわからない小さながんや良性疾患も診断できる。しかも診断精度は80~90%というから、1~2年に1回定期的に受診したい。
※女性セブン2011年5月12日・19日号