著書に『あの4億円脱税主婦が教えるFX勝利の真髄』などがあり、FX(外国為替証拠金取引)界のカリスマ主婦として知られる池辺雪子氏。なんといっても注目すべきは、これまでFXで8億円も稼ぎ出したというその手腕である。
そんな池辺氏のもとには「どうすれば勝てるのか?」という投資家からの相談が続々と集まっている。そのうちの一つをここで紹介しよう。
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【質問】
FXで勝つために必要なものはなんでしょうか?
【池辺氏の回答】
98%がテクニカル分析です。
テクニカル分析とは様々なツールを使ってチャートを分析することですが、そのいいところは、売買をする基準が明確になることです。テクニカル指標は数多くありますが、どれも売り買いのサインが決まっていて、客観的なトレードをすることができます。
もちろん、FXをしている人が、全員テクニカル分析でトレードしているかというと、そうではありません。初心者だけでなく、ある程度投資の経験を積んだ人でも、「もう十分下がったから買いだろう」といった相場観でトレードをしている場合が結構あるのです。しかし、この相場観というものほど、アテにならないものはない。相場観といっても、単に相場の動きを追っているだけで、その場の状況に大きく左右されがちなのです。具体的なエピソードを紹介しましょう。
2001年9月、米国で起きた同時多発テロ事件のときです。テロ発生とともに、金融市場は大混乱に陥り、為替市場ではドルが暴落しました。対円で122円近辺だった米ドルは、あっという間に118円台に急落、9月20日には、115円台まで下落してしまったのです。
そんな暴落を見せられて、市場ではさらなるドルの下落を予想する声が圧倒的となりました。しかし、私は、テクニカル的に見て、ドルは十分に下げたと判断し、ドルの買い注文を入れようとしたのです。
そして、注文するためにFX業者に電話をすると、こんなときにドルを買うなんてバカな、といわんばかりの勢いで、私に注文を入れないようにいってきたのです。業者が客の注文を取り次がないなんて、普通では考えられません。しかし、いくつもの業者が同じように、注文を思いとどまるようにいってきました。当時、ドルが下がるという見方(=相場観)に、いかに支配されていたかが分かると思います(最後は引き受けてくれる業者が見つかりました)。
その後、ドルは115円を底にして、スルスルと反発しました。何の根拠もなく、まだドルは下がるなどと考えていたら利益を得るチャンスを逃していたのです。
昨年も似たことが起きました。欧州の通貨危機に端を発した円高が進み、米国の金融緩和も相まって、円が対ドルで15年ぶりの高値を付けたとき、「そのまま史上最高値を更新してどんどん円高が進む」という見方が大多数でした。
一方、私は円の長期トレンドから、1ドル=80円程度で円高はピークを打ちドル安に転換すると予想しました。それ以後、東日本大震災が起きるまでの為替相場は、予想通りの展開になったと思います。
円が70円台に突入するという予想は、ファンダメンタルズ分析に基づいたものが多かったようです。ファンダメンタルズ分析とは、国ごとの経済や金融市場の動向などを分析するものです。そして、「これから経済が良くなりそうだから、おそらく金利も上昇するに違いない。そうなれば通貨も上昇するはず」といった予想を立てるわけです。しかし、これもあまり信頼できません。経済の動向を予測すること自体難しく、仮に、その予想通りになっても、為替がその通りに動くとは限らないからです。
テクニカル分析なら、明確なサインが出ます。あとは、そのサイン通りに注文を出すだけです。大事なのは、サインが出たら、周囲に惑わされずに冷静に従うことでしょう。
※マネーポスト2011年5月号