自衛隊が震災救援にかかりきりになっている一方で隣国・中国はかつてない勢いで軍事力を増強させている。その実態を軍事ジャーナリストの井上和彦氏が分析する。
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今年3月に開かれた中国全人代(国会)で、2011年度の中国の国防予算が6011億元(約7兆5000億円)に上ることが明らかになった。
前年度比で12.7%増と、再び2ケタの高い伸び率になると話題になったが、注目すべきは絶対額だ。今回の国防費は、5年前(2007年度)の約3472億元のほぼ2倍となる。世界でこれほど極端な軍事費の増額を行なっている国は中国をおいて他にない。
その間、中国の軍事力は、どのように変化したのか。 総兵力は、約225万人から約230万人へ微増にとどまっている。
ところが海軍の艦艇は、780隻から951隻へ大幅増加。わずか5年間で171隻増(海上自衛隊は1隻減って計149隻)というのは驚異的な数字だ。
一方で航空戦力は、作戦機が3530機から1950機に激減している。だがこれは、軍縮ではなく、旧式機を最新鋭のロシア製スホーイ27戦闘機や国産戦闘機「殲10(J10)」といった第4世代機に更新しているからだ。
つまり、わずか5年のうちに1580機の作戦機を近代化更新したことになる(航空自衛隊は10機減って計430機)。
※SAPIO2011年5月4日・11日号