まだ震災の傷も癒えぬ杜の都仙台で、早くも復興特需に湧く業界がある。女性を客先の自宅やホテルに送り届けるデリバリー・ヘルス、いわゆるデリヘル業界だ。風俗情報サイト「仙台で遊ぼう」の運営会社「ReArt」の遠藤社長は語る。
「私どものクライアントは風俗系・キャバクラ系を含めて100社はあるんですが、震災でもっとも早く復活したのがデリヘル業界でした。アクセス数も震災前と比べて三割も増えています」
仙台市内のデリヘル「X」に勤めるデリヘル嬢のA子さん(20)は震災で店が休業したのに伴い、一時的に他県の実家に帰っていた。だがデリヘル店店長の
「お客さんが押し寄せてきて手が足りない。早く戻ってきてほしい」
というSOSを受けて急遽帰仙、1週間は夕方の開店から深夜まで、目も回る忙しさだったという。
「お客さんの大半は、復興事業で東北に来られた建設作業員の方でした。『初めて宮城県に来たから、一度だけ遊んでみたくて』という人が多かった」
そうなのである。いま仙台市内のホテルは他県から応援に駆けつけた建設作業員やボランティアの人たちでどこも満杯だ。彼らは昼間は復興に向けて汗をかいているが、夜も粛々と毎日を過ごしているわけではない。東北一の歓楽街・国分町の灯りを目にして、たまには羽目を外して遊びたい誘惑にもかられても仕方あるまい。
とはいえデリヘル店の営業再開については、店も葛藤があったらしい。
「やっぱり震災でみんな気落ちしているところで、風俗なんかやっていいのかというためらいがあったんですね。でも店のスタッフも女の子も被災者で、生活費を稼がなくてはいけない。生きていくためのデリヘル再開だったんです」(前出「ReArt」営業部・荒澤さん)
東京など大都会の風俗店では地方から流れてきた女性が多いが、仙台では市内や近郊出身という地元の女性が多いという。中には津波の被害が大きかった沿岸部にある石巻市の自宅が倒壊し、まさに裸一貫で働いている女の子いる。
生きていくために動き出した業界支援のために、「ReArt」は5月末まで広告費無料を打ち出した。
「私たちもクライアントさんとともに、苦しさを分かち合おうという判断です」(前出・同社遠藤社長)
だがデリヘル復活も一筋縄ではいかなかった。なにしろ水道が復活しないとシャワーも浴びられないのである。
「それで電話を受けたスタッフが、お客さんに『ちゃんとお湯のシャワーが出ますか?』といちいち確認してから、私たちを送り届けるようにしてくれていました」(前出・A子さん)
「お風呂が使えないお客様のために、手のみのサービスを始めました」という営業努力をする店もあった。さらに出勤した女の子が写メを自分撮りして短い文章を載せる「写メ日記」のコーナーでは、寂しそうな顔とともに
「一人でいると地震が怖い。だれか早く指名してください」
というアピールも忘れない。
現在は離れていた地元の馴染み客が戻りつつある。前出のA子さんも、
「常連のお客さんから『誕生日祝えなかったから、今度お買い物に連れて行ってあげる』と約束してもらえました」
とニッコリ。前出の遠藤さんがしみじみ語った。
「私たちが広告費を無料にすると伝えると、クライアントの風俗店のオーナーさんの中には、『潰れないか、やっていけるのか』と逆に心配される方もいました。仙台の風俗界は、お店も女の子もお客さんも、真面目で暖かい人が多いのです」