国内

綿矢りさ 義援金100万円出し京都で仕分けボランティア

東日本大震災の後、日本中に「自粛ムード」が漂っていた。そして、東京からは多くの外国人が去っていった。余震に加え、原発事故という、かなり特殊な状況下で、人々の気持ちはどう揺れ動いていのか。ノンフィクション作家・河合香織氏がレポートする。

* * *
ある小学校では、東日本大震災後に東京から「疎開」した子供が、「自分だけ逃げるとは何なんだ」と教師から叱責されたという。震災という特殊な状況下で、避難した人と、避難しなかった人の温度差が表面化したのだ。

こうした感覚は、義援金の額を公表するかどうかといった問題にも波及していたように思える。売名行為だと決めつけ、印税を寄付すると公表した作家を非難する言葉も聞いた。「そんなことはいわずに黙ってやればいいのに」と。

しかし、それを公表するかどうかは、避難するかと同様に、人それぞれの考えだ。わざわざそれを責めるような意見をいってしまうところに、何かが隠れているのかもしれない。

作家の綿矢りささん(27)は100万円の義援金を寄付したことを公表した。ペ・ヨンジュンなどの海外の著名人や、あるいはアフガニスタンなどの貧しい国が、日本に多額の義援金を素早く送っている姿を見て、居ても立ってもいられない衝動に襲われたのだという。

「数千万円、数億円といった大きい金額ではないこともあって公表するか迷いました。しかし、私自身、義援金のことを報道で知ったことが自分の行動のきっかけだったこともあり、別の誰かのきっかけになれればと思いました」(綿矢さん)

そして、義援金に関する議論があることを肯定的に捉えているという。

「そのような議論があるのはとても良いことだと思います。というのは、震災に関心を持ち続けるのは難しいから。その関心の火を消さないようにする発火剤に、それらの議論がなるのであればいいのではないでしょうか。何よりの問題は無関心だと思います」

綿矢さんは震災からほぼ1か月経ってから、地元・京都で行われた物資仕分けのボランティアに参加した。しかし、思いのほか物資は集まってこずに、ほとんどできることもなかったのだという。最初は集まった支援の手が、今後継続されるかどうかの瀬戸際に立たされているのかもしれない。

現地にボランティアに行く人たちもいまは少なくないが、では半年後、1年後はどうだろうか。止まっていたエスカレーターも、便座を温める機器もいまは元通りになっている。今回の地震は「未曾有」だといわれ続けてきた。しかし、時間を経ることで、忘れられることも少なくないのではないか。今回のこの痛みが、のど元過ぎれば忘れられることになってしまうわけにはいかない。

※女性セブン2011年5月12日・19日号

関連記事

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン