2011年本屋大賞を受賞した『謎解きはディナーのあとで』(小学館)。その著者が東川篤哉さん(43)だ。
東川さんは、学生時代から書くことに興味はあったというが、
「まだワープロも普及していないころだったので、原稿用紙に手書きで書こうとしたのですが、字が汚くて挫折しました」
と、作家の道を断念している。
大学卒業後は、ガラス瓶メーカーの経理に就職、26才で早々退職。この先何をしようかと考えたとき、思いついたのが「ミステリーを書く」ということ。しかし、その生活は決して楽なものではなかった。
「埼玉で、出荷本の仕分けをするというバイトをしながら、月収12万〜13万円で食いつなぎ、日々コンテストに応募し続けました。30才を過ぎてもパッとしなくて、このまま芽が出なかったらどうなるんだろうなあと…。でも、この生活から逃げ出したいとは、不思議と思いませんでした」
苦節8年、34才でデビュー。その後順調にミステリーファンの支持を集め、本作で老若男女多くのファンを得た。脱サラして17年。冒頭、「生活は何も変わってない」と話した東川さん。現在の住まいは、登場人物の麗子や影山が活躍する中央線沿線にある家賃ウン万円のアパートだそう。
「渋谷の不動産屋さんで勧められた物件が日当たりが悪かったのですが、断り切れず…そこからいまの家に1回引っ越しただけです」
また、携帯電話は持たず、パソコンはあるものの、インターネットには未接続という。
「別にポリシーにしているわけじゃないんです。貧乏生活が長かったので、このスタイルに慣れてしまったということでしょうか(苦笑)」
※女性セブン2011年5月12日・19日号