以前はそれなりに利益を出していたFX(外国為替証拠金取引)投資家の中にも、リーマン・ショック後はなかなか利益が出せなくなっている人が多い。
その理由のひとつは、円キャリートレード(金利の低い円を借りて高金利外貨に投資する取引)の流れが終焉し、外貨を買えば利益が出るというトレードスタイルが通用しなくなったからだ。 円安基調でもあったその当時は、高金利通貨を買うことでスワップ金利を得ることで利益を上げることもできた。
しかし、リーマン・ショック後は値動きが激しくなり、トレンドが急に反転することもあり、損切りが遅れると大きな損失を抱えてしまうことが多くなった。そこで、機械的に利益確定や損切りを実行してくれるシステムトレードが注目されているというわけだ。
ALL外為比較を運営するSBIホールディングスの渡部純一氏はこう指摘する。
「以前は自分で判断して買ったり売ったりするトレードが主流でしたが、リーマン・ショック以降、大きな損失を抱えてしまう人も増え、自分の判断だけでは勝てない、と考える人が多くなりました。また、自分でルールを決めて売買している人の中にも、いざというときに損切りを躊躇してしまい、想定よりも大きな損失を抱えてしまう人も増えました。
そうした中で、機械的に取引したほうが損失が広がらないのではないか、ということになり最近、システムトレードが注目されてきたのです」
一口にシステムトレードと言っても幅は広い。「晴れだったら買い」「雨だったら売り」というような非常に単純なものでも、ルールを決めてその通りに売買すればシステムトレードであるし、プロが複雑なシステムを使って売買ルールを導き出すのもシステムトレード。
さらに売買ルール通りに手動で取引するのではなく、注文自体も自動で行なう自動売買もシステムトレードの一種だ。
売買ルールを決めても、確実に実行しなければシステムトレードの効果が十分発揮できないことから、徐々に自動売買が主流になりつつある。
渡部氏はこう語る。
「弊社にもシステムトレード、なかでも自動売買に関する問い合わせが多くなってきましたし、8月に実施される第二弾のレバレッジ規制を前に、自動売買のシステムを導入するFX会社も増えてきました」
※マネーポスト2011年5月号