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被災者を支える遺族年金により遺族の人生設計が大きく変わる

東日本大震災で甚大な被害を受けた福島・相馬市の相馬年金事務所。大地震の前までは1日の来訪者は30人程度だったが、今では連日、約60人の被災者が足を運ぶ。

「津波で年金証書をなくしてしまった。再発行してほしい」「着の身着のままで避難したので保険料が納付できない。どうすればいいのか」

一様に切実な表情で相談に訪れている。同事務所の担当者はこう話す。「今後、遺族年金の支給が始まれば、さらに多くの方が見えるでしょう」

遺族年金とは、年金加入者が死亡した際、遺された配偶者や子供に支給される年金だ。サラリーマンの妻の場合、夫の保険料納付期間が25年未満であれば25年納付したものとして、25年以上であればその年数で、夫が受け取るはずだった老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3に相当する額を、妻が再婚または死亡するまで受け取れるなどの保障がある。

厚生労働省は遺族年金の支給を早めるため、行方不明者が死亡したと推定する期間を、現行の「1年以上」から「3か月」に短縮する法改正を進めている。遺族の多くは、早急に生活資金が必要になるからだ。

たとえば、夫は死亡時に45歳(22年納付)で平均月収が約30万円、妻は43歳(専業主婦)、15歳の子供1人というケースでは、妻は遺族年金をいくら受け取れるか。

子供が高校を卒業する(18歳年度末)46歳までは、「遺族厚生年金約50万円、遺族基礎年金約80万円、子供の加算約23万円」の合計約153万円が毎年支払われる。その後、65歳未満までは「遺族厚生年金約50万円、中高齢寡婦加算約60万円」の合計で年額110万円。65歳以降は「遺族厚生年金約50万、老齢基礎年金約79万(第3号だった期間と合わせて妻が40年間保険料を納めた場合)」の合計約129万円が生涯支払われる。ただし、妻が30歳未満で子供がいない時などは、遺族厚生年金の支給が5年間に限られる。

サラリーマンの場合は業務中の災害で死亡すれば、労災認定も受けられる。すると、前述の遺族年金に加えて、一時金300万円と遺族補償年金(夫が年収500万円であれば遺族2人で年額約160万円。子供が18歳未満の場合、約50万円増額)を受け取れる。

一方、自営業者の妻の場合、最高で32万円の死亡一時金が出るほか、子供が高校を卒業するまで遺族基礎年金と子供の加算の合計約103万円が、60~65歳までは最高60万円の寡婦年金(夫が受け取るはずだった老齢基礎年金の4分の3相当額)が支払われる。

「年金博士」として知られる社会保険労務士・北村庄吾氏が指摘する。「年金といえば『定年後の生活を支える定期収入』と思われがちですが、今回の震災で、遺族年金の存在が注目されました。

働き盛りの夫を突然亡くし、幼い子供を抱えて妻が途方に暮れる、というケースは被災者に限ったことではありません。そんな時、遺族年金をいくら受け取れるのかによって、遺された家族の人生設計は大きく変わってきます。65歳未満の夫が死亡する前々月までの1年間に保険料の滞納があると遺族年金は受け取れない、といった支給条件もあるので注意が必要です」

※週刊ポスト2011年5月6日・13日号

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