東日本大震災は日本人の心に何をもたらし、何を変えたのか――。震災をきっかけに結婚する人、引っ越す人が増えているという。ノンフィクション作家の河合香織氏がレポートする。
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3・11以後、結婚式場のキャンセルが相次いだが、一方では婚約指輪を買い求める人が増えたという話も聞く。震災を機に、結婚を決意した人たちも少なくない。
「恋人という立場ではなくて、家族として生きていこうと思いました」
20代のカップルはそう語る。
東京都板橋区のある保育園では、4月から入園するはずだった0才児は7人のはずだったのだが、全員が入園をキャンセルした。それまではあれだけ待機児童の問題が話題になっていたのにもかかわらず。
「手元において、自分で育てたいと思いました。育休をそれほど取れない会社であったけれども、子供との時間には代えられません」
「水の問題があったので、人に任せるのが怖くなった。しばらく自分自身が子供を守っていきたい」
母たちはそう話す。
子供の学校のそばにある会社に転職する親もいる。そして、引っ越しをする人たちも。湾岸から地盤の硬いところ。そして、東京から地方へ。放射能が怖いというだけではない。誰とどのような時間を過ごすことが大事なのか、収入や便利さよりも大切なものに気づきだしている人が多いように思える。
※女性セブン2011年5月12日・19日号