なんともショッキングな話をしてくれたのは大阪府在住の主婦・湯口里美さん(仮名)。彼女は隣人の主婦・英子さんの姑があまりにも怖いのだと話します。(女性セブン1988年2月25日号より)
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英子さんによると、朝になってご主人が出かけると、姑のいやみが念仏のように始まるのやそうです。
「あんたのせいで隆(息子・仮名)は人柄が変わってしもうた。前は、そりゃあ、私にやさしゅうて、気いつく子やったのに、あんたがあの子をダメにしてしもうた。この盗っ人! 呪い殺してやりたいわ」
というて、まるで半狂乱でわめき散らすそうです。そして、お正月明けにご主人は1か月の長期出張となり、狭い部屋で嫁姑ふたりっきりになったんです。彼女は涙を浮かべて、
「パートから帰ったら、うちん中がまっ暗なんです。へんやな思うて、奥の姑の部屋をのぞいたら、ぶったまげてしまいました。
姑が頭からまっ黒い布をかぶり頭のてっぺんに2本のロウソクを角のように生やして、なにやらムニャムニャと一心に唱えているんです。これ、ほんまの話なんですよ」
近所でも姑さんのことは有名で
「あそこの人は、ひとり息子を嫁にとられて、気がおかしくなってるよ」とウワサしています。
つい、1週間前のことでした。仕事を終えて、夕方の6時ごろアパートに帰ると、隣から、“コケェー、コッコ、コ、コ~”“ニャーゴ、ニャーゴ”――なんと、ニワトリとネコの鳴き声がするんです。
「なにやってるんやろ?」
好奇心の強い私は、半開きのドアからそっと中をのぞきこんでみました。
その途端、全身の血が凍りつくかと思うほどのショックで、その場にへたりこんでしまいました。ニワトリが首をチョン切られ、バタバタと羽をうちふるわせて、断末魔の息をしているではありませんか。
白い羽は鮮血でまっ赤に染まり、私は夢をみているのかと頭がボーッとなりました。
ふっとわれに帰ると、あの姑がニワトリの首からしたたり落ちる血を、お皿に入れてるんです。そして、悪魔にとりつかれたような陰にこもった声で、
「この泥棒ネコめ! 隆は私のもんや、それをひとり占めしよって…。さぁ、死神の血をたっぷり飲むんや!!」
思わず、叫び声をあげそうになりました。なんと、天井から吊されたひもにネコの首がかけられていたんです。それは、英子さんがかわいがっていたネコなんです。ブツブツと呪文を唱えながら、そのネコにニワトリの血を浴びせかけているのです。
恐怖でガタガタと体が震え、私ははうようにして自分の部屋に戻りました。しばらくは歯がガチガチと鳴ってとまりませんでした。そういえば、ここ1週間ほど、英子さんの姿が見えません。まさか…!? とは思いますけど。
ご主人がもどったようすもないので、姑を置きざりにしてふたりでどこかへ逃げたのかもしれません。私もこんな不気味なアパートは一日も早く出たいと思っています。