副腎やその周辺の神経に発生するのが褐色細胞腫だ。腫瘍内でカテコールアミンというホルモンを産生し、それが原因で高血圧や不整脈、高血糖や過剰発汗などの症状が起こる。
大半は良性で、手術で完治するが、約10%が再発する悪性で、多発や遠隔転移を起こす。症状からは病名が特定しにくく、従来は入院して24時間蓄尿検査をしていたが、血液検査で確定診断が可能になった。
非常に重症の高血圧や動悸、過剰な発汗、重度の頭痛、吐き気などが発作的に起こるのが褐色細胞腫だ。症状だけでは何の病気か不明で、時にはパニック発作に襲われる場合もある。
これらの症状は腎臓上部にある副腎髄質や傍神経節に発生した腫瘍内で、カテコールアミンが大量に産生されたことにより起こる。カテコールアミンは神経伝達物質のアドレナリン、ノルエピネフリン、ドパミンなどのホルモンで、これらが血圧を上げ心拍数を増加させる。
大半は良性腫瘍で、切除手術で完治するが、約10%が悪性となり再発や転移する。悪性で肺や骨などに転移した場合は治療法がほとんどなく、死亡率も高い。筑波大学大学院臨床検査医学の竹越一博准教授に聞いた。
「褐色細胞腫が悪性かどうかは、再発や肺や骨への転移で判断します。手術時の病理検査でも、悪性かどうかの診断はできません。35歳以下で発症する場合は遺伝性であることが多く、患者全体の20~30%が遺伝子の変異によるものといわれています。遺伝子については研究段階のものもあります」
現在同施設のほか、全国12の大学病院で褐色細胞腫の遺伝子診断を実施している。遺伝性は非遺伝性に比べて、発症年齢が若く、副腎の両側発生や甲状腺、小脳など別の腫瘍を合併することがあるといった特徴がある。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2011年5月6日・13日号