福島原発事故が原発事故の国際評価基準でチェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」となったことで、チェルノブイリの被害に改めて関心が高まっている。
だが、チェルノブイリの健康被害については誤解が多い。
反原子力の立場を取る活動家、学者、医者たちは「数十万人が死ぬ(死んだ)」などというが、科学的データはそうなっていない。
最も信頼できるとされる事故評価は、国連の8機関(WHO、IAEAなど)とベラルーシ、ロシア、ウクライナの政府が参加した「チェルノブイリ・フォーラム」が取りまとめた調査だ。
2005年の会議で、以下のように報告された。
●小児甲状腺がんが4000例発生し、9人死亡(翌年、15人に修正された)。
●成人の甲状腺がんへの影響ははっきりしない。
●その他のがん、白血病が被曝の多いグループで増えたとされる調査は、被曝量のデータが不正確である。
●被曝量の多いグループ60万人のうち、最終的に4000人が被曝によるがんで死亡すると予測される。
●今後、白内障、心血管疾患との関連調査が必要。
●胎児の奇形、乳児死亡率と被曝を関連づけるデータはない。
健康被害の報告は、およそ以上である。環境被害については、被曝地域で「人間活動がなくなり、生物の多様性で類のない聖域になった」と報告されている。
当時、ニューヨークタイムズは社説を掲載し、「健康被害も環境被害も恐れられていたよりはるかに小さく、公衆が受けた最大の被害は、誇張されたリスクに基づく精神的被害だった」と書いた。
今こそ、その教訓を活かすべき時ではないか。
※週刊ポスト2011年5月6日・13日号