市民団体『母乳調査・母子支援ネットワーク』は4月21日、千葉県と茨城県在住の女性4人の母乳から放射性ヨウ素が検出されたことを発表した。その4人から出た、もっとも高い数値は、1kgあたり36.3ベクレルだった。
この発表について、日本赤十字社医療センター副院長、周産母子・小児センター長の杉本充弘氏はこう話す。
「今回のレベルであれば母乳を与えてもかまわないと思います。母乳の免疫性や栄養バランス、母と子のスキンシップの問題などを考えれば、不安がってやめてしまうことのマイナス要素の方が大きいでしょう」
だが、警鐘を鳴らす専門家もいる。食環境に詳しい美作大学大学院教授・山口英昌氏の話。
「放射性ヨウ素は、大人よりも胎児や乳幼児の方がはるかに影響を受けやすいんです。細胞を壊したり、遺伝子を傷つけ、将来の成長に影響を及ぼすこともありますし、甲状腺がんを起こす可能性も高まるでしょう。飲料水の暫定規制値でさえ、さまざまな意見があります。母乳も、授乳用の水に準じて1kgあたり100ベクレルを下回ればよいと単純に考えるのではなく、授乳のために個別に規制値をつくるべきなんです」
愛するわが子に母乳を与える。多くの母親がそれを望み、子供にとっても必要なものだと信じてきただろう。しかし、現実に起きている放射能汚染を前に、やはり母乳をためらう人もいる。
飲用水の規制値を下回るから「問題ない」と政府はいうが、そこには、子供たちに将来起こるかもしれない事態への保証が100%はないということは忘れてはならないのだ。
※女性セブン2011年5月12日・19日号