震災から1か月以上が経過しても明確な復興計画を打ち出せず、原発の事故対応も右往左往。この国の指揮官であるはずの菅直人氏の体たらくは、国民を呆れ果てさせた。『宰相の資格』の著書があるジャーナリストの櫻井よしこ氏が、菅氏の「情けないリーダーシップ」を喝破する。
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「カミソリ」「危機管理のプロ」と言われ、中曽根内閣の官房長官として内閣安全保障室などを立ち上げた後藤田正晴氏は、「信じたくもない、聞きたくもないという類の悪い情報、本当の情報を真っ先に報告せよ」が口癖だったそうです。初代同室長だった佐々淳行氏にうかがった話です。
佐々氏は、「菅首相は『後藤田五訓』を見習うべきだ」と言います。それは、【1】省益を忘れ、国益のみを考えよ 【2】最悪の情報を上げよ 【3】勇気を持って意見具申せよ 【4】自分の仕事じゃないと言うな 【5】激しく議論して、決定した後は直ちに命令を実行せよというものです。
【1】については、菅氏は、自分がいかに長く政権の座にあるかしか考えていないようです。これは省益も国益もなく、私益です。
【2】については、菅首相の行なってきたことは正反対です。「そんなことは聞いていない」「どうなっているんだ!」などと部下や関係者を怒鳴りつけている。そのため周囲は、怒鳴られない情報、楽観的な見方ばかりを伝えるという悪しきパターンに陥っています。結果として、【3】がまったく行なわれていません。意見具申すると返ってくるのは叱責ばかり。これでは官僚も政治家も首相に意見を言わなくなるのは当然です。
【4】について言えば、菅氏の下では会議や対策本部が乱立していますので、もはや当事者たちも何が自分の仕事なのかがわからないのではないかとさえ思います。
【5】については、震災から日数が経っても被害からの立ち直りが進んでいないことを見れば、この政権の絶望的無能さがわかります。
災害に見舞われた時、最悪の事態を回避するにはどうすればいいのか。どのような対策が必要で、そのための人員、資材や機材をどう調えるか。そうした情報を把握したうえで総合的な計画を立てる、国家的な仕組みを作ることが必要です。
※SAPIO2011年5月25日号