100~150年周期で発生し、現時点で156年もの不気味な沈黙を保っているのが、駿河湾沖を震源とする「東海地震」だ。東京大学地震研究所教授・古村孝志さんは、こう分析する。
「いつ起こってもおかしくありません。9年前の中央防災会議では犠牲者9200人、建物全壊26万棟、経済損失37兆円超などの被害想定が発表されましたが(下のデータ)、この数字はあくまでも単独で東海地震が起こった場合。東南海・南海地震と連動して起こった場合、さらに被害が拡大する可能性があります」
震度5強が予想される東京では、耐震性の低い建物は破損したり、傾いたりする恐れがある。
「東日本大震災でも震度5強を記録しましたが、実はビルを揺さぶる長周期地震動はM9.0という地震の規模から考えて小さく、被害は少なかったんです。東海地震で長周期地震動がこの程度という保証はありません。過去の東海地震の傾向から推測すると、長周期地震動による揺れは東日本大震災の時の3倍になると覚悟しておいたほうがいいでしょう」(古村さん)
静岡市内では震度6強以上が予想されている。専門家の間で危険といわれているのが静岡市蒲原地区。海と山に挟まれた500mの狭いスペースに、東名高速道路と東海道新幹線が走る。
「想定を超える高い津波が襲来した際には2本ともさらわれる可能性も」(古村さん)。
2009年に発生したM6.5の静岡沖地震では、県内各所で高速道路の路肩が崩れ、復旧までに5日を要した。さらに激しい揺れと津波に襲われれば、陸路は長期間寸断されるだろう。
【東海地震シミュレーションデータ】
想定発生時刻:午前5時
マグニチュード:最大M8.0
震度:最大7
死者:最大9200人
避難者:地震発生1週間後までに約190万人
建物全壊:約26万棟
ライフライン:断水人口約550万人、停電人口約520万人、ガスの供給停止人口約290万人
※女性セブン2011年5月26日号