全国から被災地に駆けつけてくるボランティアは、被災者たちにとって物心両面の支えとなっている。ところが、なかにはボランティアと称して、傷ついた心の中に忍び込もうとする者も出没している。
4月中旬、宮城県南三陸町の避難所のひとつを、50代とおぼしき女性2人組が訪れた。
南三陸町の職員がいう。
「ひとりは精神科医、もうひとりは臨床心理士と名乗り、“避難所の子供たちへのカウンセリングがしたい”と申し出てきたんです。持っていたのは手書きの名刺で、2人は“東京から来た”と話していました。
本来、ボランティア希望者はいったん南三陸町のボランティアセンターで受け付けをしてもらうことになっているのですが、善意の申し出をむげにできず、泊まり込みでのカウンセリングを許可したんです」
ところがその日のうちに、やはりボランティアで避難所にいた別の医師から、「あの2人は怪しい」という声が寄せられた。
現地にいたボランティアスタッフがいう。
「地味なシャツに綿パンだったでしょうか……。格好は普通なんですが、恐ろしいほど粘着質なんです。ひとりの子供に30分以上、何やらぶつぶつと延々話しかけているし、目が笑っていなかった」
不審に思った医師が、医師会に照会するなどして2人の身元を調べてみると、欧州のある国ではカルトとみなされている組織の日本支部のメンバーだった。
とはいえ、行政側も「カルトかもしれない」という理由で排除するわけにはいかない。
「そこで『町のボランティアセンターを通して改めて来てほしい』とお願いしたんです。するとスッと姿を消しました。その後、どこに行ったのかはわかりません。町のボランティアセンターにも結局現われていないようです」(前出・職員)
※週刊ポスト2011年5月20日号