4人の死者を出した「焼肉酒家えびす」のユッケ集団食中毒事件。同店にユッケ肉を卸した東京・板橋区の食肉卸業者・大和屋商店は「生食用として出してない」と主張しながらも、それを覆すメールが見つかったほか、大和屋役員とみられる人物がネット上で「ユッケ用」として牛肉を通信販売していたことも発覚した。つまり、同社では“生食用の肉”と認識した上で、一般の客にも肉を販売していたことになる。
どうしてこんなことが当たり前のように行われてきたのか。東京都内で古くから焼き肉店を経営するAさんがこう話す。
「われわれのように古くから焼き肉店をしている人は、信頼している組合などに加盟している大手の卸業者からしか肉を仕入れません。しかし、大手の卸業者は激安店や新規参入のチェーン店などには、あまりいい条件を提示しません。ですから、そういう店の経営者は組合などに加盟してない小さな卸業者を探して、価格を叩いて仕入れるんです。
しかし、そういった業者は価格重視になって、衛生管理などはどんどんいい加減になり、ひどいところでは偽装などが行われるんです。また小さな業者は大手から独立した人が多く、まともにやっていたら大手には勝てない、と値段など何かに特化したゲリラ的な商売をするんです」
大和屋も1994年まで東京都食肉事業協同組合に加盟していたという。組合にはいるかどうかは任意なので、非加盟でも問題ないのだが、国は組合などを通じて衛生管理の徹底などを通知することが多く、組合未加入業者はどうしても行政の目が届きにくくなる。食品汚染に詳しいジャーナリスト・郡司和夫氏もこういう。
「激安系の卸業者は販売先を増やすために、“効率よく使える”という触れ込みで、ユッケをすでにミンチにした状態で出荷しているところもあります。この場合も、古い肉を混ぜて袋詰めしたりということも平気で行われているんです」
※女性セブン2011年5月26日号