個人投資家の毎月分配型ファンド(以下、毎月分配型と略す)へのニーズは依然強い。「通貨選択型ファンド」の大ヒットもあり、今や3000本程度ある投資信託の数量ベースで5本に1本、残高ベースでは6割以上を毎月分配型が占めている。根強い人気の背景をリッパージャパンのファンドアナリスト、篠田尚子氏が解説する。
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毎月分配型は、しばしばマスメディアでネガティブな評価を受けるが、そこには誤解もある。 最もよく見受けられるのが、インカムゲイン(利息収入)やキャピタルゲイン(運用差益)を分配金として毎月吐き出すため、「利益の再投資による複利効果がない」というものだ。これは誤解であり、複利効果とは、確定利回りである金融商品にのみ期待できる効果であって、確定利回りではない投資信託にはそもそも望めない。
逆に、分配金という形で利益を定期的に投資家に還流することは、リスクを抑制する効果がある。たしかに、利益を再投資することで将来のリターンは大きくなる可能性はあるが、確実ではない。運用動向によっては、得られた利益が減少する可能性もあるからだ。
ただし、毎月分配型は、文字通り、毎月分配金を投資家に支払うため、その都度手数料などのコストがかかる。年1回だけ分配金を支払うファンドに比べれば、コスト面での不利は明らかである。
そうしたコスト面での不利があるにもかかわらず、毎月分配型の人気が続いているのだが、その人気は、定期的にインカムゲインを得たいという個人投資家のニーズの反映だろう。特に、サブプライム・ショックおよびリーマン・ショック以降、利益をこまめに確定させ、確実にインカムゲインを得たいというニーズは強まっているようにみられる。
加えて、毎月分配型人気の背景には、運用サイドの技術の進歩も見逃せない。「通貨選択型ファンド」はその代表的な商品といえる。
従来の毎月分配型は、国内最大のファンドである『グローバル・ソブリン・オープン』のように、海外の先進国の高利回り(ハイ・イールド)債券を主たる投資対象としてきた。
外貨建てとなるため、どうしても為替の影響を免れることはできなかった。円安傾向が続けば、為替差益も加わり、安定的な運用と手厚い分配金を出すことができたが、一転円高傾向となれば、分配金は減額され、基準価額も下落することが多かった。
しかし、通貨選択型ファンドは高利回りを追求するとともに、為替動向が変化すれば、通貨のスイッチング機能などを活用して、対応することができるのである。
※マネーポスト2011年5月号