竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は、「家庭菜園をやりたいので、土地を貸してくれといわれています」と、以下のような質問が寄せられた。
【質問】
近所の人から、私が所有している空き地で、野菜を作りたいから貸してくれといわれています。建物を建てるのではなく、家庭菜園として野菜を作るだけのようですが、あとで面倒なことにならないようにするためには、どのようなことが必要でしょうか。大事なことがあれば、アドバイスをください。
【回答】
家庭菜園であれば、土地が土壌汚染などで劣化する心配も少ないので、必要になったら間違いなく返してもらえることが重要です。土地の貸し借りには、無償で貸す使用貸借と、地代をもらう賃貸借の2種類があります。賃貸借のうち、建物所有を目的とする場合には、借地借家法の適用があり、借地人が保護されているので注意が必要です。その点、ご相談の場合は家庭菜園ですから、心配ありません。
しかし、菜園である以上、耕作のために使われるので、農地法の適用が気になります。農地法は、農地の権利設定や移動を厳しく制限しています。農地の賃貸借の開始や終了には農業委員会の許可が必要とされるので、家庭菜園が農地になるのであれば、まずこの点が問題だからです。
ですが、元々の農地を貸すというのではなく、宅地を一時的に家庭菜園にするというのであれば、農業経営を前提とした農地にはあたりません。農地法ではなく、民法の適用を受け、貸借期間を定めることが重要になります。期間を定めないと、使用貸借の場合であれば、家庭菜園としての使用収益が終了しないと返還を請求できません。しかし、いつ終了するかが争いの種になります。
また、土地の賃貸借で期限を決めない場合、解約の申し出をしてから最低1年待たなくてはなりません。しかも収穫の季節がある農地の賃貸借では、次の季節の耕作に着手する前、つまり刈り入れ後に、次の耕作開始までに解約の通知が必要とされています。
以上のことから、家庭菜園用として貸すときは、契約の際、もともと宅地であり、短期間、趣味の家庭菜園としてのみ耕作する目的で使用を認めることを明記し、賃貸借期間も1年とか2年と定めることが望ましいと思います。
※週刊ポスト2011年5月20日号