スポーツ

セルジオ越後氏 日本のスポーツは今が親企業から脱する好機

 震災復興は「脱企業」「地元密着」のスポーツ文化を育てるチャンスではないか。地元の名士をチーム会長に招けばJリーグも変わるはずだと、サッカー解説者のセルジオ越後氏は指摘する。以下は、セルジオ氏の主張である。

 * * *
 地震と津波に加え、原発事故や節電・自粛ムードの広がりによる産業界へのダメージは甚大だ。サッカーを含めた日本のスポーツ界は、今季はもちろん、来季以降もスポンサー獲得という面で大きな困難に直面するはずだ。

 事実、東電はFC東京のスポンサーから撤退。なでしこリーグの東京電力マリーゼも無期限の活動自粛に追い込まれ再開のメドは立っていない。

 ただ、こうした問題の根本的な原因は地震や原発事故にあるのではない。日本のスポーツ界は良くも悪くも企業のスポーツ文化を背景にしている。親会社の経営状態がそのままチームの命運を握る。

 今後、企業の財布の紐はさらに固くなるはずだ。1年や2年で元に戻ると考えるのは甘いかもしれない。ただ、これは前進のきっかけと考えた方がよい。

 日本のスポーツが“親会社ありき”の企業スポーツ文化から脱却し、真の意味でのクラブスポーツ文化へと転換するために本格的な議論を始めるチャンスだからだ。巨大企業におんぶに抱っこという状態から独り立ちしなければ、日本のスポーツ界に未来はない。

 それは決して簡単なことではない。だからこそ今の状況を生かし、生き残るための準備をする必要がある。

 例えばこういうのはどうだろうか。チームの会長に親会社からの出向ではなく、地元の名士を招くのだ。そうすれば地元での営業的な競争力が備わり、かつ選挙で選ばれることで足腰の強い体質に生まれ変わることができる。

 Jリーグ本部は分配金制度のような中央集権的なあり方をやめ、クラブの裁量に任せる運営に転換すべきだ。自由度が増せばチームは必ず活性化するものだからだ。

 世界でも例のないスケールの自然災害に見舞われた日本は、戦後最大の困難に直面している。悲劇からの復興は外国人も含めた日本に暮らす全ての人に課せられた重い宿題と言える。

 だからと言って私は悲観はしていない。日本が立ち直ることを固く信じている。実際、過去の震災の際も強い団結で乗り越えてきた。この国には世界に誇るべき、逆境を跳ね返す強いメンタリティがあるのだ。

(※)せるじお・えちご/1945年ブラジル・サンパウロ市生まれ。18歳で名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約、日系二世初のブラジル1部リーグプレーヤーとなる。その後、ブラジル代表候補に選出される。1972年に来日。現在は辛口のサッカー解説で人気を博す。

※週刊ポスト2011年5月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
入場するとすぐに大屋根リングが(時事通信フォト)
興味がない自分が「万博に行ってきた!」という話にどう反応するか
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン