震災直後は、被災地のみならず関東でも小売店に人が殺到し、多くの商品が品薄状態となった。そんな中で、コンビニ大手・セブン-イレブンは、「流通小売業日本一」の名にかけて、戦っていた。
セブン-イレブン・ジャパンの執行役員・渡辺良男氏は、出張先の新潟で震災に遭った。渡辺氏は全国約1万3000店舗のうち、北海道から関東の約6500の店舗を統括している。
セブン-イレブンでは、4月13日からは「移動販売車」を開始している。宮城県多賀城市、仙台市などでは、地震・津波の被害により、復旧に時間がかかる店舗がある。そうした地域のニーズに応えるために、食料品や生活必需品を満載したトラックで、商品を販売するというものだ。
「実は、昨年から、過疎地で店舗から遠いというお客さまのために、移動販売をしようという構想がありました。それを今回の震災を受けて急遽本格的に立ち上げ、被災した店舗の前などで営業することにしたのです」
渡辺氏をはじめとする本部の迅速な動きに加え、震災2日後には早くも福島県のパン工場が稼働し、配送センターも徐々に復旧するなどして、3月26日からは「1日3回配送」が実現している。
3月下旬に被災地の店舗を回った渡辺氏は、被災地の店舗のオーナーからこんな言葉をかけられたという。
「『あの状況の中で、商品を供給してもらったのは非常にありがたい』『他の小売店が壊滅している中で、“セブン-イレブンだけは品物がある”とお客さまに言っていただいた』と。
私は、震災によって、『モノを販売して感謝してもらう』という商売の本質を、改めて認識しました。そして、私たちはどんな時でも現場の店舗に商品を送り続け、お客さまに届ける義務があることを再度、胸に刻みました」
今日も、商品を載せたトラックは被災地を走っている。
※SAPIO2011年5月25日号