ライフ

震災後16年 阪神淡路の被災者に復興住宅からの退去を要請中

 東日本大震災の復興のため、阪神淡路大震災をモデルとした「復興構想会議」が立ち上げられた。しかし、この「阪神モデル」が必ずしも理想のプランではないと神戸大学工学部教授の塩崎賢明氏が指摘する。
 
* * *
 復興災害で苦しんでいるのは、再開発ビルに入居した商店主だけではない。家を失い復興住宅に暮らす人々にも、いま新たな問題が起きている。借り上げ住宅からの追い出しだ。

 神戸市は震災後、住宅復興を急ぐ観点から、また費用節減の観点から、民間住宅やUR住宅を借り上げて公営住宅として被災者に賃貸する方式を取ってきた。いわゆる「また貸し」だ。
 
 つまり、家主と市が契約関係を結び、市が被災者に通常より安く貸しているのだが、家主と市との賃貸契約満了期間が20年間となっていた。
 
 神戸市は入居の時点で被災者に対し、入居期間の件を曖昧にしたまま、16年過ぎた今になって、出て行くよう要請しているのだ。災害後、十数年を経て、ようやく生活も落ち着き、周囲の人間関係も築いてきた被災者が、再び大きな困難・不安に直面している。
 
 被災者の多くは高齢者であり、彼らの生活回復・再建を支援することが復興住宅の役割だ。通常の公営住宅と同等の扱いとなるようにしなければならない。
 
「復興災害」の中でも、見過ごされがちな問題が「災害障害者」である。
 
 阪神淡路大震災での死亡者は6434人にのぼったが、一方で1万人以上の重傷者が出た。その中で後遺症を持ち、普通の生活ができなくなった人への補償というものが、全く忘れ去られていたのである。
 
 神戸市では15年後の昨年になって、ようやく災害障害者の調査が始まった。
 
 21世紀のめざましい社会に対応すべく、インフラストラクチャーには巨額の資金を投入したが、その一方で15年間も大震災の被害で傷つき、働くこともできなくなった被災者への支援は忘れ去られていたのだ。復興の中で被害を受けた人たちすべてを救済するという姿勢が見られない顕著な復興災害である。

※SAPIO2011年5月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

田久保市長の”卒業勘違い発言”を覆した「記録」についての証言が得られた(右:本人SNSより)
【新証言】学歴詐称疑惑の田久保市長、大学取得単位は「卒業要件の半分以下」だった 百条委関係者も「“勘違い”できるような数字ではない」と複数証言
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン
“高市効果”で自民党の政党支持率は前月比10ポイント以上も急上昇した…(時事通信フォト)
世論の現状認識と乖離する大メディアの“高市ぎらい” 参政党躍進時を彷彿とさせる“叩けば叩くほど高市支持が強まる”現象、「批判もカラ回りしている」との指摘
週刊ポスト
国民民主党の玉木雄一郎代表、不倫密会が報じられた元グラビアアイドル(時事通信フォト・Instagramより)
《私生活の面は大丈夫なのか》玉木雄一郎氏、不倫密会の元グラビアアイドルがひっそりと活動再開 地元香川では“彼女がまた動き出した”と話題に
女性セブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
前伊藤市議が語る”最悪の結末”とは──
《伊東市長・学歴詐称問題》「登場人物がズレている」市議選立候補者が明かした伊東市情勢と“最悪シナリオ”「伊東市が迷宮入りする可能性も」
NEWSポストセブン
日本維新の会・西田薫衆院議員に持ち上がった収支報告書「虚偽記載」疑惑(時事通信フォト)
《追及スクープ》日本維新の会・西田薫衆院議員の収支報告書「虚偽記載」疑惑で“隠蔽工作”の新証言 支援者のもとに現金入りの封筒を持って現われ「持っておいてください」
週刊ポスト
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン