事実上、何の規制もないまま、ユッケ=生肉が客に供されていた――そのことに、そもそも驚かされた、激安焼き肉チェーン店『焼肉酒家えびす』の集団食中毒事件。
激安店などを含む一般的な焼き肉店では、卸業者から部位ごとに仕入れるのが普通だ。すると何が起こるのか。食品汚染や環境問題に詳しいジャーナリストの郡司和夫さんが指摘する。
「部位ごとに安く買い叩いているケースでは、卸業者が流通段階で出元のわからない肉を仕入れている疑いも否めません。黒毛和牛といいつつ、同じ国産牛でも乳の出なくなったホルスタインの肉を混ぜていたケースもありました」
つまりは消費者のみならず、焼き肉店でさえ、出所不明、部位不明の肉を仕入れている場合があるというのだ。このような流通格差があるからこそ、焼き肉店の調理場での衛生管理はより重要になる。関西の高級焼き肉店のオーナーAさんはいう、
「生で食べる場合、調理に相当注意しなければならない。トリミングは当然のこと、専用のまな板や包丁を使い、調理前にアルコールで消毒します。包丁と手でミンチ状にするユッケの場合、包丁に菌が付着していれば、肉を細かく切るたびに、その切り口に菌を巻き込む危険性がある。それを手で練れば、さらに菌をユッケ中心部まで練り込んでしまうことになります」
そう指摘したうえでAさんは、人件費の削減で低価格を実現している激安店の問題点を挙げた。
「アルバイト中心でシフトを組み、ときには店長クラスまでアルバイト。肉の扱いに精通している従業員がいないので、解凍して盛りつけるだけ。肉のプロではないので解凍した肉を常温で放置したりすることもあります。菌が付着していれば、その間にも増殖してしまう」
また、別の焼き肉店オーナーのBさんによれば、「牛肉と、鶏肉や豚肉を同じまな板で調理している店もあります」として、こう指摘する。
「鶏肉や豚肉は牛肉より菌が付着している可能性が高い。アルバイト店員が消毒もせずに同じまな板で調理すれば、牛肉にも菌が付着することになります」
※女性セブン2011年5月26日号