マンガやアニメ化も話題となり、社会現象となっている『もしドラ』。原作は250万部を突破したベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社刊)だ。マネジメント(経営学)の父と言われるピーター・F・ドラッカーは、「組織のリーダーの資質」について、多くの言葉を残している。その『もしドラ』著者の岩崎夏海氏が、大震災に直面した日本に必要なリーダー像について語る。
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ドラッカーは言う。
〈マネジャーにできなくてはならないことは、そのほとんどが教わらなくても学ぶことはできる。しかし、学ぶことができない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである〉(『マネジメント』より)
「真摯さ」は、ドラッカーのキーワードの一つで、原書では「integrity」となっている。この言葉には「人から何を言われても自分の信念を曲げない」という意味が強く込められている。
つまり、「何が正しいか」を考えるのなら、自分の信念を曲げず、「正しい」と思ったことに突き進むことが大事だということである。それが行動にもつながっていく。
ところが、菅直人氏を見ていると、「○○会議」「○○対策本部」といった組織をいくつも立ち上げ、人の意見ばかり聞こうとしているように感じられる。これではいつまで経ってもがんじがらめの状態で、一向に前に進めないのではないか。
英語で「No pain, no gain」(痛みなくして前進なし)という表現がある。正しいことをやろうとすると、必ず批判され、逆風が吹くという意味だ。だから真のリーダーは嫌われることが多い。
「人から好かれる人がリーダーになることはあまりない」というドラッカーの言葉があるが、まさにその通りだと思う。こうも言っている。
〈リーダーシップは重要である。しかしそれは、今日、リーダーシップと名づけられ喧伝されているものとは大いに異なる。それは、いわゆるリーダー的資質とは関係ない。カリスマ性とはさらに関係ない。神秘的なものではない。平凡で退屈なものである。その本質は行動にある〉(『プロフェッショナルの条件』より)
もし、真のリーダーを国政に求めるなら、首相は国会議員の中から国会の議決で指名すると定めている憲法を改正し、民間から招聘するという手段も考えられなくもない。もし私が選ぶとすれば、ソフトバンク社長の孫正義氏である。孫氏のように国難に際し、多額の私財を投じるなどのリスクを背負い、なおかつ信念をもって真摯に行動する人なら、耳を傾けてもいいかな、と思うのだ。
※SAPIO2011年5月25日号