5月8日、「技量審査場所」初日の両国国技館には、早朝から当日チケットを求める観客の行列ができ、最後尾はJR両国駅近くに及ぶほどだった。こうした光景は、10数年前の若貴ブーム以来のことである。
土俵上では、確かにいつもとは違う緊張感が漂っていた。
幕内力士の土俵入りが始まると、ひときわ歓声が沸きあがるのは、高見盛、安美錦、稀勢の里、若の里、琴奨菊、豊真将といったガチンコ力士の名が呼び上げられる時だ。観客も、しっかり見極めができていることがわかる。
初日は取組内容に変化が現われた。まずは、立ち合いで突っかける場面が多発。八百長相撲に多いとされる「寄り切り」や「上手投げ」が激減し(それぞれ3番と2番)、6番が「押し倒し」や「押し出し」という土俵下までもつれる決まり手となった。ケガを恐れない真剣勝負が展開されたことを物語る結果だ。
ある親方は初日を終えて国技館を後にする際、思わずこんな言葉を口にした。
「こんな相撲をやっていれば、人気が出るよ。今日は少なかったからなァ」
「何が」少なかったのかは、いわずもがなだろう。しかし、「なかった」とはいわなかった。
※週刊ポスト2011年5月27日号