未曾有の危機に際して、リーダーはどうあるべきか。マッキンゼー本社ディレクターやアジア太平洋地区会長などを歴任し、世界屈指の経営コンサルタントとして、活躍してきた大前研一氏が、有事のリーダーのあるべき姿を語る。
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思えば、かつての戦国武将は皆、万一に備えた危機管理プランを持っていた。彼らは一国一城の主、すなわち家臣や領民の生存に責任を負っているリーダーだから、いざ合戦となった時はどうするか、籠城戦になったら食料や飲み水や塩などをどうやって調達するか、逃げ道をどのように確保するか、といったことを周到に考えていた。
当時の日本には「リーダーを養成する仕組み」があり、だからこそ多くの優れた戦国武将が登場したのだと思う。日本は再び、戦国時代のようなリーダーを養成する仕組みが必要な時期に差し掛かっているのではないか。
というのは、今の日本には政界にも財界にも本当のリーダーがいないからである。
もちろん今の民主党政権は、リーダーシップ以前の問題だ。各大臣や党幹部、さらには鳩山由紀夫前首相、党員資格停止になった小沢一郎元代表などがてんでバラバラに行動している。
ボート競技のエイトに喩えれば、進路を決めるコックス(舵手)が不在のまま、8人の漕手が好き勝手な方向にオールを漕いでいる。それに付き合わされる国民は、たまったものではない。
※SAPIO2011年5月25日号