4月に行われた夕張市長選に勝利し、“日本一若い市長”として一躍有名になった鈴木直道さん(30)は、それまでは東京都庁に勤める職員だった。
11月末に出馬表明。都庁に辞表を出して退路を断ち、夕張に引っ越した。まずはより多くの市民に名前を覚えてもらうべく町を歩き回った。
2008年に都の職員として夕張市へ出向し、2年2か月間市役所で働いていたとはいえ、まだまだ知名度は低い。「鈴木直道です」といってあいさつをしても、市民の反応は「誰?」「何だこのあんちゃんは」とにべもなかった。
「石原都知事が選挙に向けての薫陶を授けてくれました。『夕張市民の全員に会え』というんですね。だから、町中をびっちり回りました。最初は『誰?』だったのが、『市長選に出ようとしている若い人ね』となり、最後は私が名乗ると『わかっています』といわれるように。面白いもので5か月で明確に変わりました。目に見えて感触が変わり、これが選挙だと実感しました」
助走期間を経て迎えた4月17日の告示日。「夕張と東京をつなぐ」をスローガンに夕張の再生を誓い、「この町を良くしたい」と訴え続けた。
相手は自民党の前衆議院議員で小泉チルドレンのひとりである飯島夕雁氏(46)や、前回の夕張市長選では次点で落選した会社社長の羽柴秀吉氏(61)ら。いずれも鈴木さんを知名度で上回る難敵だった。しかもJAなどの組織票をことごとく相手陣営に奪われていた。
人口1万1000人の小さな町の市長選は熱く燃え上がった。石原都知事と猪瀬副知事が鈴木さんの応援に駆けつけ、相手陣営は佐藤ゆかり、片山さつき、橋本聖子ら現職の著名議員が姿を見せた。自民党元幹事長の武部勤議員が飯島陣営のてこ入れをし、武部議員の友人の杉良太郎が夕張入りする豪華な選挙となった。
結局、鈴木さんは3569票を獲得。次点の飯島候補を800票引き離しての完勝だった。投票率は82%。「夕張は変わらないといけない」という市民の強い願いが、全国一高齢化率が高い町に全国一若い市長を誕生させた。
※女性セブン2011年5月26日号