東日本大震災、福島第一原発事故の影響による風評被害で、東北や北関東各地の大観光地で閑古鳥が鳴いているという。大観光地が好きで、機会を見つけては“大人の修学旅行”に出かけているというノンフィクションライターの北尾トロさんが、これは聞き捨てならん。実態はどうなのかと、自分の目で確かめるべく、連休が始まる4月28日から、日光、会津若松、ラーメンで知られる喜多方を巡る2泊3日の旅に出た。以下、トロさんのレポートだ。
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すでに東照宮の周辺のホテルや土産物店は限界ギリギリのところへ追い込まれていて、何軒かは真剣に廃業を検討しているらしい。食事をするためはいった『本家やまびこ』では例年、3月にはタイやシンガポールから大勢のツアー客がやってくるのだが、今年はゼロ。会長・川島慎太郎さんの嘆き節が止まらない。
「日光は外国人だらけで、ざっと半分が海外からの客。うちも3月はタイだけで3000食の予約がはいっていたけど全部キャンセルされました。日光が怖いんじゃない。海外から見たら、日本にいま行くことはクレイジーなんだよね。我々観光業者は、会えば“いつやめるか”という話ばかりしてます」
1か月半かそこらで、こんなに苦しい状況になるのはなぜだろう。日光は日本を代表するメジャーな観光地だから、少々のことには耐えられそうなものじゃないか。
ところが実態は、メジャーだからこそもろいのだと川島さんがいう。大規模な施設を維持するには金がかかる。建物など、借金してでも見栄えを良くする必要がある。客さえ来れば有効な手段である投資も、日々の収入がなくなると、たちまち経営を圧迫してしまう。
海外からの客と国内ツアー客に頼りきっていた弱点がさらけだされた形だ。ただ、自分たちの努力不足ならいざ知らず、風評被害で立ちゆかなくなるなんてあんまりじゃないか。GWとその後の経緯次第では倒産が相次ぐことになるだろう、ウチも意地だけで店を開けていると、川島さんはタメ息をつくのだった。
「とにかく原発だよね。頼むから、一日も早くメドをつけてほしい」
※女性セブン2011年5月26日号