近年の経済界では、誰が経営責任を負っているのか不明瞭な企業が増えている。その原因として、まず社長を名乗る人が増えたことが挙げられる。
事業の拡大に伴い大企業にカンパニー制度が導入されて以降、事業部の長にも社長の肩書きが付与されることになった。
1億人分を超える個人情報を漏洩させたソニーは、カンパニー制度を導入した企業の代表格だ。
経済ジャーナリストの有森隆氏がいう。
「もとは家電メーカーのソニーはここ10年余りで映画、ゲーム、ネットワーク分野に駆け足で進出してきた。次々と子会社を設立、つぎはぎの組織を広げていった。でも新規事業は、創業者の盛田昭夫氏、井深大氏が育んだモノ作り文化に馴染んだ本社社員から見れば専門外の分野。さらに事業部の執行役員が増えすぎて情報が集約されず、ハワード・ストリンガーCEOが、全体を把握するのは難しかった。情報漏洩は起こるべくして、起きた事件といえます」
※週刊ポスト2011年5月27日号