菅直人首相による浜岡原子力発電所の停止要請と中部電力がそれを受け入れたことについて、経産省幹部は、浜岡停止は“捨て石作戦”だと暴露する。
「経産省の中枢が4月から練っていたシナリオです。総理は浜岡停止で支持率を上げたい。電力会社は定期点検が終わった原発を早く稼働させたいが、国民の原発不信解消にはきっかけがいる。総理が他の原発は止めないと約束したから、浜岡を止めることで他を生かすという作戦ができた」
証言を裏付けるように、菅首相の浜岡停止要請と同じ日に、原子力安全・保安院は、東京電力の柏崎刈羽、関西電力の3原発、九州電力の2原発をはじめ全国9電力の15原発に対し、津波対策を終えたという保安規定を認可した。
これで法律上は定期検査を終えた関西電力美浜原発など6基から順番に再稼働できるが、各電力会社は地元自治体と安全協定を結んでいるため、県や市町村の了解がいる。そこでこの夏に全国で「停電ドミノ」が起きる可能性が大宣伝されているのである。
その役割を担うのが与野党の原発推進派だ。菅首相は浜岡停止を決めた日に関係が悪化していた民主党原発推進派の仙谷由人・官房副長官と会食して“手打ち”をすると、自民党の大島理森・副総裁は、「電力供給が大変心配だ」と呼応した。
「浜岡停止」は、新たな「原発暴走」への政官・与野党の第一歩なのだ。国民は決して油断してはならない。
※週刊ポスト2011年5月27日号