ユッケ社長に東電社長。今やすっかり、謝罪会見の定番セレモニーと化した、「土下座」の風景。
土下座とは本来、深い謝罪や請願を表わす座礼を意味する。1700年以上の歴史を持つ、礼節を重んじる日本ならではの儀礼なのだ。
3世紀末に記された中国の『魏志倭人伝』には、土下座は邪馬台国の風習「跪礼」として、庶民が貴人と道端で出会うと「平伏して拍手を打つ」と、紹介されている。古墳時代に土下座姿を模した埴輪があることからも、日本では古来、崇高な儀式であったことがうかがえる。
そこへいくと昨今の土下座ときたら、あまりになんとも軽々しい。リスクマネジメントに詳しいジョーズ・ラボ代表取締役の城繁幸氏は、「土下座に、果たして意味があるのか」と、首を傾げる。
「日本には土下座をよしとする土壌があり、その意味で一定の効果はあるでしょう。ですが、現代の土下座は基本的にパフォーマンスですから。東電の社長などはその最たる例です」
広報コンサルタントの石川慶子氏も“やすくなった”と感じている。
「不祥事が起きた際に世間が求めるものは、原因の究明です。誰が悪かったのかではなく、何が悪かったのか。アンケート調査でも、“原因究明と再発防止が一番”という意見が半数以上を占めます。世の中は必ずしも謝罪を求めているわけではないんですよ。それはそうでしょう、謝罪をしてほしいのは被害に遭った人なのですから。でも、頭を下げて謝罪している絵がないと会場から出て行けないから、土下座してしまうんですよね」
※週刊ポスト2011年5月27日号