焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」でユッケを食べたことにより4人の死亡者を含む100人以上の食中毒患者を出した問題だが、実際、「ユッケ問題は氷山の一角だ」という声がある。
ここ数年、激安のホルモン専門チェーン店が急拡大している。 ある食肉流通業者はこう語る。
「仕入れ原価の安いホルモンは、業界内ではデフレ時代の救世主と呼ばれ、雨後の筍のように専門店が登場している」
だが、食品問題に詳しいジャーナリストの郡司和夫氏は警鐘を鳴らす。
「ハツ(心臓)やコブクロ(子宮)など、直接菌に触れない内臓類はともかく、人気の小腸や大腸類はもともと菌を持っているので注意が必要です。加熱すれば菌は死滅しますが、表面に凹凸のあるホルモンは熱が通りにくく、菌が生きたまま口に入ることがある」
特に危険とされるのが、小腸を開かずに筒状のまま裏返した「マルチョウ(丸腸)」だという。高級焼き肉店経営者がいう。
「一般に高級店では危険性が高いのでマルチョウは提供していません。腸は必ず開いて表と裏を洗浄するのですが、マルチョウは筒状で提供するため、洗浄が行き届かない危険がつきまとう。しかも、筒の内側は火が通りにくく、菌が残りやすいからです」
また、一部の激安店では、牛肉か豚肉かを表示していないケースまである。
「豚の体温はヒトに近いので、人間に感染する菌を多く持ち、特にE型肝炎ウイルスへの感染リスクがある」(前出・郡司氏)
他に危険性が指摘されるのが、ミンチを使ったハンバーグや、クズ肉を集めて作られた成形肉だ。米国では食中毒の発生原因のトップがハンバーグだという。
「中心がレア状で、肉汁が溢れ出るハンバーグが人気になっていますが、本来は肉の表面にしかいないはずの菌が、ミンチにしたことで内部でも増殖している可能性がある。ハンバーグを生焼けで食べることは危険なのです」(同前)
肉が好きなら、肉のことをもっと知らなければならない。
※週刊ポスト2011年5月27日号