ちょっとした時間に手軽にうまいサンドイッチを食べたい! ……というわけで、グルメ雑誌『アリガット』誌の元編集長・小川フミオ氏がセレクトした、『ボントン』(東京・日本橋)の「カツサンド」を紹介します。
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パンと具材というシンプルな組み合わせだけに、サンドイッチは世界中に存在する。日本代表は、カツサンドだろうか。西は牛カツ、東はトンカツだ。
東京人に愛されるトンカツサンドのなかでも「これはうまい」とずっと思っているのが日本橋蛎殻町の『ボントン』のもの。
半世紀前からカツサンドを手がけ、近くの芳町をはじめ、柳橋や新橋の花柳界では、ここから出前を取るのが流行っていたという。
「ある日、男性客が店に来て、カツサンドを頬張るなり、『やあ、いつもお茶屋で食べているのはお宅のだったのか! 気に入っていたんだ。でも本当はこんなに安いのか』といったので大笑いでした」と、主人の田口冨士男さんは語る。
うまいカツサンドとは――。個人的には、豚肉の適度な脂、主張しすぎないパン、甘み抑えめのソースの3点につきると思う。この3条件が同時に揃うのが難しいわけだが。
トンカツの衣にも使う特注のパンは軽い甘みと酸味があり、歯ごたえも適度。豚の内ももを使うカツはジューシー、衣はサクサク。味覚の面でも触覚の面でも、食べ飽きない。店で食べて、おみやげも注文してしまうほどだ。
■『ボントン』の「カツサンド」1470円
【住所】東京都中央区日本橋蛎殻町2-15-2
【営業時間】11~14時、17時半~21時半
【定休日】土日祝
【カード】不可
トンカツとカツサンドの店で、約50年前に創業。40年前から洋食レストランとなって現在にいたる。明治座や歌舞伎座の役者にもひいきにしている人が多く、差し入れにとカツサンドの注文が多く入るとか。人気メニューはトンカツと、洋食弁当。株式市場がある兜町や、繊維問屋の多い馬喰町や横山町のサラリーマン諸氏からも愛されてきた。食べごたえあるローストンカツ定食は1785円だが、ランチでは量を抑えて945円で提供している。
撮影■岩本朗
※週刊ポスト2011年5月27日号