あなたの背中が「ミニ発電所」に。震災後、携帯を2時間でフル充電できるソーラーパネルバッグに注文が殺到している。作家の山下柚実氏が報告する。
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「太陽を持ち歩こう!」
余震が続いて気分がふさぎがちな時、心も体もあたたかくなるようなフレーズだ。でも、これは励ましの言葉でもなければ、レトリックでもない。
私が背負っているバッグはなんと背中で発電中です。散歩しているその間に、太陽光で携帯電話を充電できちゃうから驚き。携帯は2時間あまりでフル充電、PDA(携帯情報端末)やデジカメ、携帯ゲーム機なども充電できる。その名は『ジュースバッグ』(Kweather Japan社)という。
「『飲むジュースと関係あるの?』とよく聞かれるんです」と開発・販売に携わるケイウェザージャパンの上西範久氏(50)は笑った。
「アメリカでジュースといえば、電源のこと。このバッグはソーラー発電パネル付きで、電源を持ち歩く、ということで『ジュースバッグ』なんです」
3月11日に発生した東日本大震災の被災地へ、すでに50個を寄付した。
「現場で具体的に役立つ道具を送ることができて、開発に携わった者としてもありがたいです」
約5年間、「ジュースバッグ」の改良を重ね、日本での販売に試行錯誤してきた経験から発せられた生の声だった。大震災以来、飛ぶように売れている『ジュースバッグ』。価格は1万~3万円台だが、注文が殺到中だ。
「今、生産ラインはフル稼働中です。ただ特殊な太陽光パネルを使っているので、月産200個が限度。在庫はほとんどなくなっています」
余震が続く都会でも、防災意識は高まる一方。停電下で携帯電話や三洋電機の充電式電池「エネループ」が充電できる、と聞けば、「防災用バッグ」として常備したい、と思う人も多いだろう。
だが、上西氏は言う。
「関心が高まるのはありがたいけれど、そもそも『防災』目的で作ったものではないんです」
えっ? では何の目的で?
「私たちの生活は、壊れたらすぐ捨てる、大量の電気を好き放題使う。そんなスタイルですよね。でも、エネルギーだって自分で作ることができるし、身近にたくさんの自然の力がある。環境への意識を変える小さなきっかけになればと、ジュースバッグに関わり始めたんです」
※SAPIO2011年5月25日号