おぐにあやこ氏は1966年大阪生まれ。元毎日新聞記者。夫の転勤を機に退社し、2007年夏より夫、小学生の息子と共にワシントンDC郊外に在住。著者に『ベイビーパッカーでいこう!』や週刊ポスト連載をまとめた『アメリカ+なう。』などがある。おぐに氏によると、「虫」に対する意識も大いに違いがあるようで…。
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たとえば蝉(cicada、シカダ)。「日本じゃ、蝉のはかない一生は『もののあはれ』の代表格よ。晩夏のヒグラシのカナカナって鳴き声を聞くと胸がしめつけられるように切ないわ~」と私がいうと、アメリカの友人たちは「ウソだろ。ただの騒音源じゃないか」。17年に1度大発生する「17年ゼミ」に代表されるように、アメリカでは最も忌み嫌われる虫のひとつなのだ。
そういえば、「Beetle Queen Conquers Tokyo(邦題『カブト東京』)」というドキュメンタリー映画を撮ったアメリカ人監督も、「日本人は、虫のはかない命に美を感じるが、アメリカ人にその文化はない」といってたっけ。子供時代、昆虫が大好きだった彼女はアメリカで、奇人扱いされてたらしく、日本を知ったとき、「昆虫好きには夢のような国」と思ったんだって。
※週刊ポスト2011年5月27日号