三陸銘菓『かもめの玉子』は黄身餡をホワイトチョコレートで包んだ玉子型の菓子。製造元のさいとう製菓(岩手県大船渡市)では、津波で約5億円の被害が出た。主力工場は無事だったが、海から200mの距離にある本社と和菓子工場、直営店は外壁だけを残し、がれきに姿を変えた。
それでも齊藤俊明社長は震災翌日にはトラックのガソリンをかき集め、従業員と共に21万個の在庫を各避難所に配って回った。
唯一残った主力工場でも震災後は材料の卵や餡の調達が困難となり、製造は約4週間止まったが、「ピンチはチャンス」と齊藤社長は従業員を激励。1日も早い生産再開へ突き動かしたものは、「早く『かもめの玉子』を食べたい」という客の声だったという。
4月6日から製造ラインの稼働を開始。現在はほぼ通常通りの製造が可能になり、全国から寄せられる注文に応えるため、工場は忙しさを増している。
大船渡商工会議所の会頭も務める齊藤社長は、「我々企業も、被災した市町村がどう復興していくべきか、市や県と一緒に考えていきたい。生きるには前を向くしかない」と語る。
【かもめの玉子】6個箱入り578円ほか各種
岩手県内の直営店や、東京のアンテナショップ「いわて銀河プラザ」、ホームページなどで購入可能。http://www.saitoseika.co.jp/
撮影■丹羽敏通
※週刊ポスト2011年5月27日号