東日本大震災以降、被災地以外でも心の不調を訴える人が増えている。「いまはまさにうつの時代」と話すのは、ヒガノクリニック院長の日向野春総さん。
「いまは経済も低迷し、独創的なことが嫌われ、なんでも小さくまとまる時代。ストレスを発散しにくい社会環境なんです。そんなときに今回のような震災が起こると、被災していない地域の人でも不調を訴え、うつ病を発症しやすい状況になっているといえます」
テニスが趣味だったパート主婦のAさん(48才)のケースでは、ママ友のすすめもありテニスクラブに入会。クラブの帰りには仲間とランチやお茶をしていたが、Aさん以外の主婦は比較的お金に余裕があるらしく、誘われるお店が高級なところばかり。
Aさんはせっかくできた友達関係を壊したくないという思いと見栄から、なんとか家計をやりくりしてつきあっていたが、夫から「無駄遣いばかりするな」と怒られたことがきっかけで眠れなくなってしまったという。そのうち、一日中どうしたらいいのか考え込むようになり、家事も手につかない状態に。
「Aさんは、見栄をはって無理にテニスクラブのつきあいをしていたため強迫性障害になってしまったケースです」(日向野さん)
強迫性障害というと、何度も手を洗わないと気がすまない、家のカギを閉めたか何度も戻って確認しないと不安、といった症状があるが、Aさんのように「みんなと合わせてつきあわなくては」と対人関係に強いストレスを感じ、不安感に襲われるという症状もある。
強迫性障害は、真面目な人や几帳面な人、完璧主義の人がなりやすいのが特徴だ。
「治療には抗うつ剤などの薬を使うこともありますが、Aさんのようなケースは、ストレスの原因となっているテニスクラブをやめるしかありません。実際に彼女もクラブをやめたとたんにケロリと治ってしまいました。家族は、本人のプライドを傷つけないようにアドバイスしてあげることも大切です」(日向野さん)
家族は、「体が疲れちゃうからテニスは休んだほうがいいんじゃない?」などと、やめる理由を一緒に考えてあげることが有効だ。
※女性セブン2011年6月2日号