心の不調は他人からは見えないだけに、理解してもらえないことも多い。だが、不調が明らかに体にあらわれてしまうこともある。
専業主婦のAさん(53才)は、夫に怒られたことがきっかけで目が見えなくなったという。夫に従順な性格のAさんはこれまで大きな夫婦げんかをしたことがなかったが、たまたま夫の機嫌が悪くものすごい剣幕で怒鳴られた。その瞬間、Aさんの視界は真っ暗になり目が見えなくなってしまった。眼科に行っても異常はないため、心療内科を訪れた。
「Aさんは、以前はヒステリーと呼ばれていた身体表現性障害の一種でした」(ヒガノクリニック院長の日向野春総さん)
身体表現性障害とは、精神的なストレスが原因で、目が見えなくなる、吐き気がする、お腹が痛いなど身体症状が出るのが特徴。また、男性に比べて女性のほうがなりやすい。
「Aさんの場合は、よく話を聞いてみると、子供のころに母親に殴られることが多く、目をつぶってじっと我慢していたという経験があった。そんな過去の記憶が旦那さんに怒られたことがきっかけで、あふれ出したのでしょう」(日向野さん)
身体表現性障害は予兆がなく突然表れる。
「薬の処方だけでは治らない病気なので、心と体は互いに影響し合っていてそのバランスを保つことが重要であることを本人が理解し、規則正しい生活を送ることが必要です。家族は“仮病だ”などと思わずに、目が見えない、お腹が痛い病人として、同情的に扱ってあげましょう」(日向野さん)
Aさんの場合も、「出かけたい」というAさんに対して、夫が「目が見えなくて危ないからやめておこう」などといっているうちに、自然と改善していったという。
※女性セブン2011年6月2日号