日本株の約6割は外国人投資家が保有しているが、なかでも最近、存在感を増しているのが「チャイナマネー」である。日本に流入するチャイナマネーの正体はどのようなものか。拓殖大学・政経学部教授の朱炎氏が解説する。
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日本に流れ込んでいる可能性が高いチャイナマネーの主体は、大きく4つに分かれる。
【1】中国投資(CIC)
中国の政府系ファンドで、資本金2000億ドルのうち半分強が海外投資枠とされている。金融危機で出資していたブラックストーン株やモルガン・スタンレーの転換社債で損失を抱えた一方、国内に振り向けていた国内金融機関の株で上場益を手にして2009年から再び海外投資を積極化。2010年2月に米SEC(証券取引委員会)に提出した報告書では、2009年末までに米国上場の84社に総額96.27億ドルの投資を行なっていたことは明らかにされている。
ただし、これはその一端に過ぎず、残りの投資先は明らかにされていない。日本企業の株を大量保有している「OD 05」などのファンドを使って日本に投資している可能性は高いと見られる。
【2】国家外貨管理局(SAFE)
2兆8000億ドルを超える外貨準備高を運用。うち約9000億ドルを米国債が占め、残りはユーロや円の国債などで運用していると見られる。昨年8月には日本国債を2兆円余りも売却していたことが判明したが、その後は短期債を売りつつ長期債を買うような動きも見せている。
【3】全国社会保障基金(NSSF)
中国の公的年金基金であり、運用機関としてはCICよりも歴史は長い。現在の総資産は8500億元(約1275億ドル)に上るが、2011年末には1兆元になる見通し。そのうち2割は海外の国債や社債、株式で運用できるようになっているが、その内訳は公表されていない。
【4】適格国内機関投資家(QDII)
国家外貨管理局の承認の下、海外の金融市場での取引が認められた中国国内の金融機関(銀行、証券、生保など)で、昨年末時点で88社に上り、投資額は683億ドルに達している。各金融機関ではファンドを組成して投資しており、銀行系ファンドだけでも約250本を数え、運用成績でマイナスに陥っているファンドは1本もなく、うち9割は利益を上げているという。
これら以外にも、中国企業による日本企業の買収は、レナウンやラオックスといった上場企業ばかりでなく、未上場の機械メーカーや部品メーカーに広く及んでいる。さらには、シンガポールやインドネシアに在住する華人系、いわゆる「チャイニーズマネー」が日本各地の土地や山林を購入する動きもここにきて目立っているのも事実だろう。
日本側の対中アレルギーもあって、今後一気に拡大するとはいい難いが、いずれも日本株を含めた日本の資産を「割安」と見ている。海外への分散投資という意味合いからも、日本への資金流入は今後も続くだろう。
※マネーポスト2011年5月号