国内

落合信彦氏 役立たず世襲政治家だらけの某国の将来を嘆く

 世界にはカダフィ(リビア)や金正日(北朝鮮)、ムガベ(ジンバヴェ)といった独裁者たちが、存在しているが、その権力を引き継がせようとする「息子」たちが何の資質も持ち合わせていない放蕩息子ばかりだという共通点は興味深い。落合信彦氏が解説する。

* * *
 父が引きずり降ろされる時、息子たちの末路は惨めだ。

 今年に入って失脚したエジプトのムバラクの2人の息子、アラーとガマルは、父と一緒に不正蓄財の容疑で拘束されている。ムバラクの辞任の瀬戸際では、醜い兄弟ゲンカが勃発していた。

「父の晩節を汚したのはお前のせいだ!」

 長男のアラーは次男のガマルにそう迫った。確かに、ガマルはバンク・オブ・アメリカに勤務し、その時からの人脈だという多くの怪しげな男たちをエジプト政府に招聘していた。ガマルの行ないが、ムバラク政権の腐敗に拍車を掛けたという側面はあるだろう。

 とはいえ、弟に怒声を飛ばしたアラーとて、国内外の秘密口座に数千万ドル単位の隠し財産があることが明らかになっている。ムバラクはこんな後継者しか育てることができなかった。一族郎党で700億ドルもの蓄財があるというのでは、民の心が離れていくのも無理はない。

 息子を育てられない独裁者に先はない。そもそも「独裁者」という言葉の起源を辿ってみれば、それは明らかだ。

 ラテン語の「ディクタトール」とは、紀元前の共和制ローマの官職(独裁官)を指す。国家の非常事態にのみ、元老院が強力な権限を握ることのできる者を指名した。

 そもそもはごく短い期間のみ設置されていた役職だったが、それを覆したのがジュリアス・シーザーだった。シーザーは終身独裁官に就任し、その手腕を発揮したが、結局はブルータスに暗殺される。

 だが、シーザーは死ぬ前に、後継者と決めた大甥(後に養子)のオクタヴィアヌスに帝王学を徹底的に教え込んでいた。だからこそ、オクタヴィアヌスは放蕩息子にはならなかった。

 シーザーの死後に起きた内戦を勝ち抜き、ローマ帝国初代皇帝となり、500年以上にわたってヨーロッパに君臨する帝国の礎を作り上げたのである。

 国を取り仕切る政治家の資質を知りたければ、その息子を見ればいい。何の役にも立たない世襲政治家だらけのどこかの国の将来が、苦難に満ち溢れていることが、きっとよくわかるはずだ。

※SAPIO2011年5月25日号

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン