東日本大震災は、被災地自治体が持つ戸籍データ等の流出をもたらした。「この問題をデータのリスク管理というレベルの話で終わらせてはならない」と指摘するのは、大前研一氏だ。大前氏は、長年政治課題として俎上に上がっている「電子政府」構築の契機とすべきであると主張する。
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もし、電子政府化が進んだら何がどう変わるのか?
全ての公的サービスが一元的に管理できるようになり、利用者はネットやプッシュフォンで用を済ませられ、有権者は世界中どこにいても選挙に参加できるようになる。利便性が飛躍的に向上し、行政コストも画期的に減少する。個人認証に声紋や指紋などのバイオメトリックス(生体認証)を導入することで、さらに費用、時間、労力は節約できるだろう。
ただし、国民データベース(DB)の設計概念にいくつかの「大原則」を織り込む必要がある。まず、全国を網羅する国民DBは唯一無二のものとして、何か他のDBとの重複があってはいけない。そして、その中の情報は完全にリアルタイムで同期させなければならない。
もちろんクレジット会社など民間企業のDBと連動させてはならない。目的は公的サービスだけである。そして本人がいつでも閲覧できること。自分の年金や健康保険の記録が簡単に確認できるようになれば、人生設計も立てやすくなるというものだ。
※週刊ポスト2011年5月27日号