東京電力の会見は、清水正孝社長が出てきたり、勝俣恒久会長が出てきたりと権限がどちらにあるのか時に混乱してしまう。果たして権限の移譲はできていたのか……。そんななか、トップのバトンタッチに成功しているのは、伊藤忠商事である。経済ジャーナリストの有森隆氏がいう。
「伊藤忠は丹羽宇一郎氏(現中国大使)が、会社の私物化を嫌って社長6年制を公言した。それに倣って小林栄三氏(現会長)、岡藤正広氏(現社長)と、引き継がれていきました。組み合わせも巧みです。丹羽氏、岡藤氏は個性が強い急進派。一方、小林氏は穏健派。急進派が会長の時は穏健派が社長を務め、その社長が会長になれば急進派が社長に就任する。いわばボケとツッコミのようなペアです」
この真逆な二人だからこそ、バトンタッチに成功したのである。
※週刊ポスト2011年5月27日号