9・11テロから10年が経った今年、テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディン容疑者を米軍が急襲し、ついにアメリカは“復讐”を果たした。オバマ大統領は「正義は遂行された」と誇らしげに語り、アメリカ国民たちは「USA!」と歓喜に沸いた――しかし、その様子に私たち日本人が感じたのは、強烈な“違和感”ではなかっただろうか。
東部アイビーリーグ名門校の大学で国際関係論を学ぶ19才のアメリカ人女子大生に「日本では違和感もあるけど?」と尋ねると、顔を真っ赤にしてまくしたてた。
「質問の意味がわからないわ。今回殺されたのは罪のない3000人もの人を殺した首謀者よ。ヒトラーと同じでしょう。日本のオフィスビルにテロリストが乗っ取った飛行機が突入しても、日本人は仕返ししないの? ビンラディンを殺害した特殊部隊は、大統領の命令でアメリカ国民に代わって無法者を抹殺した英雄です。日本の原発で放射能漏れを止めるために頑張っている人と同じなのよ」
ただし、若者の熱狂とは裏腹に、他の年代のアメリカ人には歓喜というより安堵の気持ちが広がっている。ワシントンDCの隣、メリーランド州在住の70代女性はネットでビンラディン容疑者の死を知った。死刑制度反対論者の彼女だが、「ああ、やっと」と安堵とうれしさが滲み出たという。
「ニュースを見て、10年前のあの日のことをまざまざと思い出しました。学校にいる子供や働いている家族の無事がわかるまで、どれほど心配したか。誰しも身近に被害者がいましたからね」(70代女性)
あの日を境に街の風景が変わってしまった。
「それまで自由にはいることのできた国立の施設に高いフェンスが張り巡らされて、立ち入り禁止になりました。街のいたるところでポリスの姿を見かけるようになり、常に“私たちはテロや憎しみの対象になっている”という恐怖があったの。 ワシントンDCやニューヨークなどテロの標的になりやすいエリアに住む私たちはなおさら怖かった。ビンラディンの死によってやっとテロの恐怖から解放されたんです。だから正直、ビンラディンが死んで、うれしいと思いました」(同)
※女性セブン2011年6月2日号