大相撲の「5月技量審査場所」が閉幕した。
「最後まで勝負を諦めないので物言いのつく一番が増え、行司の差し違えが頻繁に起こる。10日目の嘉風と時天空の取組では、立ち合いで呼吸が合わず5度も突っかけて審判部長に叱られる一幕もあった。土俵は面白くなりました」(スポーツ紙記者)
かくいう報道カメラマンも、熱戦の結果、土俵下に力士たちがなだれ落ちてくるケースが多いので、いつでも逃げられるよう身構えるなどガチンコ態勢。砂かぶりに座る審判委員の親方衆も同じだった。
変化は、力士たちの心の内にも芽生えていた。
「大関の琴欧洲や日馬富士の弱さが露呈し、上位陣と対戦する力士たちがナメてかかるようになった。また、場所前からガチンコ力士としてマスコミに名指しされていた面々が、その他の力士たちから目の敵にされる傾向があった」(角界関係者)
ガチンコ“認定”力士たる高見盛や稀勢の里などには、幕内土俵入りの際にもひときわ大きな声援が飛んだ。これが他の力士には気に食わなかったらしい。実際、週刊誌などでガチンコとされた安美錦、栃煌山、豊真将、豊ノ島はことごとく負けが先行。しかも、決まり手を見る限りでは、何やら相手の“執念”のようなものも感じられた。
11日目終了時点で、2勝9敗と大負けした小結・豊ノ島は、特に痛い目に遭った。寄り切りで負けたのは2番のみで、残りは寄り倒し、押し倒し、押し出しでほとんど土俵下まで落とされる。5勝6敗の稀勢の里も、6敗は寄り切りが1番だけで、引き落とし(2番)、突き落とし、押し出し、外掛けと、何度も土まみれにされた。
優勝争いも異例の展開だった。白鵬の強さが際立っていたとはいえ、新入幕の幕尻・魁聖が初日から連勝記録を伸ばしたのは、本誌の予測通り、ガチンコ場所ならではの展開だった。
「それでも土俵には途中から“阿吽の呼吸”も働いていましたね。人気大関の魁皇と、次期大関と期待される琴奨菊には多くの力士が遠慮がちだった」(親方の一人)
地位に似つかわしくない者、意外とやればできる者、それがわかってきたのがこの場所の最大の収穫だったのかもしれない。
※週刊ポスト2011年6月3日号