国内

いま被災者に忍び寄る最大の危機 破傷風や結核などの感染症

いま被災者に忍び寄る最大の危機を、政府も国会も、メディアも見逃している。

感染症である。

過去、多くの大災害が感染症を引き起こした。今回の震災と比較される2004年のスマトラ島沖地震の際には、世界保健機関(WHO)は、最終的に地震・津波の死者23万人のこの震災で、感染症による死者が15万人に達する恐れがあると警告を発した。

結果的に、各国の迅速な救援活動やいくつかの幸運が重なり、実際の犠牲者はずっと少なかったが、大地震と津波が起きれば、感染症を厳重に警戒すべきことは専門家の常識だ。

では、東北の被災地はどうなっているか。

残念ながら、現段階で感染症対策は大きく出遅れているといわざるを得ない。もちろん、自治体や支援にあたる団体、医療機関などでは、様々な警告を発し、消毒の徹底、さらには予防の大前提になる上下水道の復旧などに尽力している。

しかし、いったん危険な感染症が爆発的な拡大を見せてしまうと、すべての対応が後手に回り、被害を食い止められなくなる。これだけの未曽有の災害では、本来なら土壌や家屋の被害を覚悟した思い切った消毒活動、あるいは超法規的措置まで検討が必要になる。

宮城県保健福祉部疾病・感染症対策室の担当者は、対応の難しさを率直に認める。

「震災との関係は明確でないが、破傷風(はしょうふう)や結核、腸管出血性大腸菌感染症などの報告が上がってきています。予防接種も検討しましたが、接種はあくまで任意のものとされており、他に喫緊の課題もあることから断念しました。避難所の衛生改善を進めるのが精一杯で、被災地全体の対策まではとても手が回りません」

この対応を責めることはできない。県レベル、専門部署の権限では、それ以上のことは難しい。だからこそ政府の真剣かつ迅速な感染症対応が急務なのだ。

※週刊ポスト2011年6月3日号

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